無限螺旋 - 終焉(4)

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「おやすみ」
「…………」

 二人はぼろ布を身体に巻きつけて、床に就いた。やがて小さな寝息が聞こえてくる。
 辺りは黒一色に塗り込められていた。星も月明かりもない森の中だ。目を凝らしても、自分の姿すら見えない。……魔女が何か仕掛けるには絶好の舞台だ。

 完全に闇に目が慣れた頃、何かが光を発したように感じた。……あれは確か、クビンが寝ている場所。

 むくり、とクビンが起き上がる。身体が燐光を発するかのように、闇の中に浮かび上がって見える。その手には……短剣が握られていた。兄から渡された、お守りの短剣。俺は無意識のうちに、懐にある自分の短剣をぎっ、と握りしめていた。
 しばらく辺りを探るような気配があり、彼はゆっくりと立ち上がると、兄、アービンの方にゆっくりと歩み寄る……。

「…………」

 無言。
 だが、彼の感情が、胸に直接流れ込んでくるように読み取ることができた。
 俺は、息を、飲んだ。とても……言葉にできない……したくもない、感情の断片が、次々と……胸に提げた短剣が、焼け付くように。
 幼いクビンは、口に出してはただ一言。

「死んじゃえ」

 短剣が振り上げられ。俺は俺に飛びかかり。振り下ろされた。

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