無限螺旋 - 終焉(3)

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 枝と葉の隙間から見える雲は流れることもなく垂れ込み、雨はいつ降り出してもおかしくない状態のまま、お預けを食らっている。太陽は見えないが、かなり傾いているのは確実だ。森は静かに暗闇に侵食されつつある。すでに10ヤード先も見えなくなり、とてもこれ以上進める状況ではない。
 道とも呼べない、木々の間の細い隙間を抜けるようにして進んできた二人の少年は、小さいが円形に開けた平らな地面に出くわした。それはちょうど、道の行き止まりでもあった。そこから別の方向に伸びる道は、少なくともこの暗がりの中では見つけ出すことはできない。
 結局、二人はそこで野宿をする決断をしたようだった。

 色彩を失った闇色の景色の中で、寝床の用意をする二人のシルエットだけ捉えながら、荷物から干し肉を数切れ取り出してかじりつく。魔女の意図がどこにあるのかまだ定かではないが、まもなくクライマックスを迎えるであろう予感があった。
 二人は無言だった。疲れもあるのだろう。しかしそれ以上に、お互い話す気になれないというのが実際のところだ。
 クビンがぐずり、アービンがなだめ……を、俺が見ていた間だけでも一体何回繰り返しただろう。同じやり取りをするたびに、お互いの不機嫌さが増していくのが、ここからでも手に取るように分かった。
 そしてそれは、俺自身にも澱のように降り積っていった。
 幼い俺自身に対する怒りだと思っていたこの感情は、正確には苛立ちと呼ぶべきものだった。それも、むしろ兄の方を見ているときに強く感じられた。……これは、あのときの俺自身が感じていた気持ちではないのか? なんでもそつなくこなし、賢く、正義感の強い憧れの兄。だがそれは俺をひどく苛立たせてもいたのだ。
 兄を前にすると、自分が卑小な存在であることを思い知らされる。兄の方が正しいと分かるからこそ、我が侭も言えない。そのことに、他人から見れば理不尽とも思える負の感情を募らせていた……。

 この森が、そんな暗い情念を増幅させているのかもしれない。そんなふうにも考える……自分でも、責任転嫁だと知りつつ。

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